国見の里 ~渡り廊下による防火区画と燃えしろ設計~

南側からエントランスを見る
北側から施設全体を見る

事業概要

指定障害者支援施設

  • 特別養護老人ホーム:定員90人
  • ショートステイ:定員10人
  • デイサービス: 定員25人

建築概要

階数 平屋
地域制限 その他の地域
防耐火種別 準耐火建築物(45分耐火)
敷地面積 20,416.27㎡
建築面積 5,679.30㎡
延床面積 5,519.80㎡
構造種別 木造(軸組工法)
設計 株式会社レーモンド設計事務所
施工 株式会社安藤組
工事工期 2013年2月~2013年7月

木造施設としての工夫

1. RC造の渡り廊下による分棟化

防火戸を設けたRC造の渡り廊下

本建物は5,000㎡を超える大規模木造平屋建築物で、面積制限がかかるため、メインを木造としつつ、鉄筋コンクリート造(RC造)の渡り廊下によって分棟化している。各部の床面積の合計を3,000㎡以内とすることで、主要構造部を耐火構造とせずに建設が可能となっている(法21条2項2号)。

2. 単純なプランニングによるコスト削減と工期短縮

ユニット化された居室

居住棟は、住宅に使用される一般的な木材を被覆した準耐火構造となっている。標準化されたユニットを連結した単純なプランとすることにより、建設コストの削減と工期短縮を図っている。トイレの壁は、ユニットによって黄緑、茶、淡い赤など色分けされ、利用者の目印となっている。

3. 燃えしろ設計による躯体の現し

交流スペース(機能回復訓練室)

交流ホールは、定期演奏会に使われたり、災害時の福祉避難所として町から指定されています。地域に開かれた施設となっており、音響についても好評を得ている。大断面製材は乾燥時間がかかるため、その部分の建て方工事を工程の最後にするなどの工夫を要した。

 

エントランスホール

 

施設概要

町内で初めての特別養護老人ホームとして計画された本施設は、周囲を山に囲まれた丘陵地帯に建っている。居住棟は、1ユニット10名の生活単位10組、計100床と共同生活室で構成されている。「地産地消」を施設全体のコンセプトとして、使用した木材の全材積1,073m3のおよそ70%程度に県産材を採用している。また、地域交流スペースの活用など地域に根差した施設となっている。

木造・木質化の特徴

4. 受付

メインステーション

メインステーションは、交流スペースと廊下に面する。木製の棚や机が設けられ、温かみのある色合いが安心感を生んでいる。

5. 共同生活室

共同生活室

スプリンクラー設備を設けることで、ユニットの共同生活室では力強い大きな木の梁を見ることができる。

6. 家具

テーブル・ベンチ

木景観形成促進事業(福島県)の一環として、県産材を使用したテーブルとベンチが設置されている。

7. テラス

中庭に面したテラス

交流スペースの外は中庭に臨む大きなテラスが設けられていて、木材がふんだんに使用されている。

8. エントランス

エントランス

内装だけでなく入口の庇まで木質化することで、利用者に加え、見学者や地域の方々も木の空間を感じることができる。

9. 床

廊下

廊下は床、巾木、建具を木質化している。床から立ち上がる形の手すりを設置することで、壁が傷つくことを防いでいる。

運営者・現場で働くスタッフ・設計者の声

  • 木造は住宅と同様の住み慣れた造りであるため、第2の住まいとして選ばれていて、入居者だけでなく、そのご家族からも評判がいい。また、新規スタッフを募集する際には、木造の施設の写真はとても効果的で、職員の確保にも役立っている。[運営者]
  • 乾燥によるひび割れを見て心配される見学者もいるが、この程度の割れは構造的に問題ないことを伝えている。建築主と施工者が正しい情報を共有し、木造に対する理解を拡げることが重要である。[運営者]
  • 床が柔らかく、働いていても足腰が疲れにくい。[スタッフ]

施設写真・図面

居住棟の廊下から見る交流スペース外観
居住棟の中庭
メインステーション前の廊下
田園に接して建つ北側の外観