ハートホーム宮野 ~外装に木を用いた耐火建築物~

東側から施設全体を見る
雁行型配置を活かした植栽スペース
エントランス

事業概要

<新設>…木造

  • 地域密着型特別養護老人ホーム:定員29人
  • 有料老人ホーム:定員48室
  • ショートステイ:定員20人

<既存の併設施設>…鉄筋コンクリート造

  • デイサービス:定員35人
  • 認知症対応型デイサービス:定員24人
  • 認知症対応型デイサービス(共用型):定員3人
  • 認知症対応型グループホーム:定員9人

建築概要

階数 地上3階建て
地域制限 法22条区域
防耐火種別 耐火建築物
敷地面積 2,976.3㎡
建築面積 1,375.9㎡
延床面積 3,875.55㎡
構造種別 木造(軸組工法)
設計 大野秀敏+吉田明弘/株式会社アプルデザインワークショップ
施工 株式会社 安藤建設(現 安藤・間)
工事工期 2011年8月~2012年6月

木造施設としての工夫

1. 地場産業への貢献

共用廊下

地元の植林伐採サイクルの再生に向けて地域産材を活用したいという思いから木造の発案に至った。コスト、流通量の点から立地を限定して、他地域のカラマツとスギを採用している。国産材を使用できるように適切な構造強度を設定する、調達に不具合が生じないよう設計段階から木材業者とコンタクトをとるなど配慮した。

2. 軸組工法による大規模耐火建築物の実現

ショートステイユニット玄関

本建物は、国内初の国産材による大規模軸組工法である。3階建てとなり、1時間の耐火性能を要求されることから、軸組工法による被覆型の耐火建築物としている。

3. 耐火建築物における木の表現

木のルーバーを外装として使用

一般に被覆型を採用する場合、躯体が覆われて、木が見えなくなってしまう。その欠点を補うため、特定行政庁と協議し、難燃塗料の塗布、外壁から離すことを条件に木のルーバーを用いている。経年変化で茶色から灰色へ変化することで、美しさを増していくように計画されている。

4. 軸組工法の採用

有料老人ホーム食堂

柱梁で建物を支える軸組工法を活かして、窓の多い、明るい施設を計画している。建物を斜めにずらした雁行型の配置および複数の中庭によって、複雑な形状となっている。軸組工法とすることで構造計算(許容応力度計算)が容易となっている。

施設概要

ハートホーム宮野は、山口市の北部地域にあり、山間部の高齢者も含めた介護ニーズに対応している。1階は定員29人の地域密着型特別養護老人ホーム、2階は定員29人のショートステイ、3階は定員39人の住宅型有料老人ホームとなっている。建物の配置を工夫することにより、大規模な施設でありながらも、建物内でも自然を多く感じられる設計となっている。

木造・木質化の特徴

5. 軸組工法の大きな開口

木の建具

軸組工法とすることで、開口面積を広くとることができる。複数の中庭が設けられていて、採光と通風が確保されている。

6. 木製の太い窓枠

リビングは木製建具と畳で温かみがある

窓枠の見附は通常より太く、45mmとしている。木が強調され、畳とともに温かい印象をもたらしている。

7. 障子の仕切り

障子の仕切りが柔らかい印象をもたらす

部分的に格子と障子を組み合わせた仕切りを設けている。障子は太鼓張りとし、両面からの意匠に配慮している。

8. 板張りの浴室

板張りの浴室

浴室の壁面は板張りとすることにより、安らぎをもたらす空間となっている。

9. 畳の床

畳敷きのユニット廊下

ユニット内の床材には畳を使用している。クッション性があり、足腰の負担が軽減するよう工夫されている。

10. 屋外空間の緑化

屋外緑化

建物の外周や中庭に植栽を施している。木製家具と連続して自然豊かな空間をつくりだしている。

運営者・現場で働くスタッフ・設計者の声

  • 木造を選択した理由には、地域産材の利用による地域活性化を図りたいという思いがあった。[運営者]
  • 歩行するときの床の感触が、コンクリート造などに比べて柔らかいと感じられるので、長時間生活する方々にとってストレスが少ないのではないかと思われる。[運営者]

施設写真・図面

居室
1階ホールから玄関を見る
談話コーナー(特別養護老人ホーム)
共用部のテラス