若草園 ~分棟化と燃えしろ設計の活用~
事業概要
- 障がい者支援施設
・施設入所支援:60室(10人×6ユニット)【A】
・生活介護事業【B】 - 短期入所事業:4室【A】
- 日中一時支援事業
【A】居住エリア
【B】活動エリア
建築概要
階数 | 平屋 |
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地域制限 | その他の地域 |
防耐火種別 | 準耐火建築物 |
敷地面積 | 10,673.54㎡ |
建築面積 | 3,548.51㎡ |
延床面積 | 3,406.24㎡ |
構造種別 | 木造(軸組工法)、一部鉄骨造 |
設計 | 株式会社関・空間設計 |
施工 | 阿部建設株式会社 |
工事工期 | 2010年7月~2011年4月 |
木造施設としての工夫
1. 【A】分棟化によるその他の建築物
居住エリアは、ユニット毎に1,000㎡以下で分棟化することによって、防火壁の不要な「その他の建築物」としている。居住エリアの玄関及びリビング・食堂の外壁は、1時間耐火(告示1358号)としている。
2. 【B】燃えしろ設計による準耐火建築物
活動エリアは、燃えしろ設計による準耐火建築物としている。廊下は、燃えしろ設計の柱、筋かいが並び、木造らしい空間となっている。その他の仕上げは、コストを重視し、塗装、クロス、構造用合板等を採用することにより、木構造体の美しさが際立っている。
3. 国産材と輸入材の活用
国内の森林保全のため国産材を採用した。構造体は、国産材として一般的で、経済的な杉材とした。内装材の柱、梁以外は、コストを重視し、ロシアンラーチ材とした。設計において、木材は流通材を基本としたため、木材の反り、割れ等について施主の理解を要した。
4. 外装の木質化
屋外側の仕上げは、防腐処理をした杉板張りとし、木材保護塗装を2回施している。経年変化による色あせを防ぐため、定期的な塗装を行っている。屋外は、特に天候の影響を受けやすく、軒の出を長くする、メンテナンスの容易な箇所に木材を使用する等の工夫を行っている。
施設概要
知的障がい者に対する「施設入所支援(主に夜間の日常生活の支援)」と施設障害者福祉サービスの「生活介護事業(主に昼間の日常生活の支援、創作活動又は生産活動の援助)」、更に「短期入所事業」の複合施設である。既存施設の老朽化と平成18年に施行された障害者自立支援法に基づいた新体制への移行に対応するため、中学校グラウンド跡地への新築移転が計画された。
木造・木質化の特徴
5. 【A】床(水廻り以外)
居住エリアの床は、合板の上に、床暖房用コルクタイルを貼っている。
6. 【A】床(水廻り)
居住エリアのユニットに備わるトイレ・洗面・洗濯スペースの床材は、抗菌性長尺シートを採用している。
7. 【A】腰壁(廊下)
居住エリアは、腰壁として構造用合板を貼っている。黒くなっている部分は、入居者が壁をつたって移動した跡である。
8. 【B】床(食堂・地域交流スペース)
食堂・地域交流スペースの床は、フローリングとしている。二重床とし、床下にヒーターを設置することで床全体を暖める。
9. 【B】床(玄関・廊下)
活動エリアの玄関及び廊下の床材は、安全性に配慮したゴムチップのタイルを採用している。外靴のまま入館できる。
10. 【B】床(大浴場)
活動エリアの大浴場の床材は、安全性を考慮しコルクタイルを採用している。
運営者・現場で働くスタッフ・設計者の声
- 一般流通材を利用する等、建物のつくり方を工夫することにより、地域の施工会社等でも中大規模木造を施工することが可能となり、アフターケアも地域で対応しやすい。一方、中大規模木造建築物に不慣れなゼネコンが未だ多く、断熱材の納まり、気密性の確保、通気層の確保等における施工は、特に配慮が必要である。若草園では経済性、施工性に配慮して、一般的な在来工法を採用している。外壁耐震壁は、断熱材の納まりに配慮し、構造用合板とし、内壁耐震壁は、設備などの納まりに配慮し、筋かいで対応している。[設計者]