なごみの里ななせ ~分棟化による耐火性能の確保~
事業概要
- 地域密着型特別養護老人ホーム:29床【A】
- ショートステイ(短期入所生活介護):10床【A】
- 児童発達支援:10人【B】
- 放課後等デイサービス:10人【B】
- 多目的ホール【B】
建築概要
階数 | 【A】地上2階建て【B】平屋 |
---|---|
地域制限 | その他の地域 |
防耐火種別 | 【A】耐火建築物【B】準耐火建築物 |
敷地面積 | 5,441.01㎡ |
建築面積 | 1,911.11㎡ |
延床面積 | 【A】1,643.4㎡【B】272.21㎡ 計 1,915.61㎡ |
構造種別 | 木造(軸組工法) |
設計 | 大久手計画工房 |
施工 | シマダ株式会社 |
工事工期 | 2017年6月~2018年2月 |
木造施設としての工夫
1. 分棟化により構造種別を分ける
特養、ショートからなる入居棟と、児童発達支援、放課後等デイサービス、多目的ホールからなる通所棟に建物を分けている。分棟化することにより、入居棟は耐火建築物、通所棟は準耐火建築物と構造を分けることが可能となっている。
2. 施工の短縮
入居棟(耐火建築物)は、工期が短縮され、補助金の申請にも対応しやすい木造を選択している。建物を耐火建築物と準耐火建築物に分けることにより、竣工日時が決まっている入居棟を先行的に工事する事が可能となっている。
3. 地盤面と1階床高さ
建築基準法施行令第22条より、最下階の床の高さ及び防湿方法は原則として第22条一号、第22条二号に定めるところとなるが、ここでは床下をコンクリートたたき仕様とし、建物周辺部を透過性のある素材とすることで通気を十分に取っている。
4. 二重床によるメリット
二重床とすることにより、転倒時のリスクの軽減を図っている。2階の音が1階まで伝わることもあるが生活上の問題とはなっていない。
その一方で、2階部分の床にコンクリートのスラブが敷かれていないため、2階で水漏れを起こすと1階まで影響を及ぼすこともあった。
施設概要
山陽新幹線の厚狭駅から徒歩10分の場所にある地域密着型特別養護老人ホームである。同一市内に定員80人の既存の特別養護老人ホームを運営している社会福祉法人が母体となっている。
施設は、特別養護老人ホーム、ショートステイのある2階建ての入居棟と、児童発達支援、放課後等デイサービス、多目的ホールのある平屋建ての通所棟に分かれており、2棟は渡り廊下と中庭でつながっている。
木造・木質化の特徴
5. 屋外渡り廊下
緩やかな曲線を描く渡り廊下。天井には、杉板を貼っている。
6. 【A】天井
入居棟の天井は、共用部分は木材、廊下はクロスと仕様を使い分けることによって、空間にメリハリを持たせている。
スプリンクラーの設備と排煙設備の設置により、内装制限を回避でき、クロスだけでなく木材を使用可能としている。
7. 【A】床
床面のワックス掛けは6か月に1回(年2回)実施している。新建材を利用している既存施設と同じ頻度である。
8. 【B】個室
心を落ち着けるよう、木で囲まれた小さな空間を設けている。天井を準不燃材料とすることで、壁一面を板張りとしている。
9. 【B】和室
通所棟は、天井を設けず、建物を支える天然木が見える設計としている。
運営者・現場で働くスタッフ・設計者の声
- 分棟化により、入居棟は耐火建築物、通所棟は準耐火建築物としている。[設計者]
- 通所棟は、雄大な梁を見せる意匠となっている。入居棟は、2ユニット×2階建てとし、職員室をはさんで2つのユニットが連結している。各ユニットには、リビングダイニングの他に小さな共用部分があり、内装材の仕様に変化を加えることによって、空間の領域分けを行っている。また、外装材、内装材、設備機器等はできるだけ住宅レベルの物品を用いることによりコストダウンを図っている。[設計者]
- 木造の選択に際し、税金や減価償却期間を考慮した際の優位性も決めての1つとなった。[運営者]