花畑あすか苑 ~枠組壁工法による耐火5階建て~

施設全体
地域交流スペース(あすカフェ)
エレベーターホール
南側正面から見る(夕景)
エントランスホール
足湯

事業概要

  • 特別養護老人ホーム:定員160 人
    (ショートステイ含む)
  • 認知症デイサービス
  • 居宅介護事業所
  • 地域交流拠スペース(防災拠点型)

建築概要

階数 地上5階建て
地域制限 防火地域
防耐火種別 耐火建築物
敷地面積 4,551.39㎡
建築面積 2,495.83㎡
延床面積 9,773.24㎡
構造種別 地上2階~5階:木造(枠組壁工法)
地上1階:鉄筋コンクリート造
設計 株式会社メドックス
施工 三井ホーム株式会社
工事工期 2015年3月~2016年5月

木造施設としての工夫

1. ウッドデッキのバルコニー

バルコニー

中高層木造施設でも避難を簡易にできるよう全周バルコニーを設けている。バルコニーは居室との段差が無いようにウッドデッキを設け、各部屋の空調を設置し、メンテナンスしやすいようになっている。

2. RC造と木造枠組壁工法の特性を生かす

南側正面から見る

1階を鉄筋コンクリート造(RC造)とすることで、大空間が必要な共用諸室を確保している。生活空間は、小空間に区切ることが可能な2階~5階としている。また、上から4層を木造とすることで、木造部に必要な耐火仕様を1時間耐火としている。

3. 大規模化に対応する高耐力壁

構造建て方

高層化された木造では、構造的に一般の建物より高い耐力を持つ耐力壁が必要となる。本建物では、一般的な枠組壁工法材料で組み立てられるミッドプライウォールを使用して、なるべく工場生産を増やし、現場での建て方作業の負担を減らしている。

4. 構造壁とプライバシー

多床室

特別養護老人ホームの従来型多床室についても、構造上必要な壁を隔壁として設けることで、枠組壁工法の構造とプライバシーを活かしたプランニングを行っている。

施設概要

花畑あすか苑は、160名入所の特別養護老人ホームである。老人ホームは高齢者施設であるとともに、入居者にとっては第2の住まいでもある。木造の家になじみの深い入居者にとって、「木の持つ風合い」の安心感から2階から5階の住居階に木造を採用している。1階が鉄筋コンクリート造、2階から5階までが耐火木造(枠組壁工法)の立面混構造となっていて、日本初の5階建て木造耐火建築物の特別養護老人ホームである。延床面積は10,000㎡弱と、木造枠組壁工法の建築物としても日本最大級となっている。

木造・木質化の特徴

5. エントランス

エントランス

エントランスには不燃処理された国産板材を使用することで木質感を演出している。

6. ユニット玄関

ユニット玄関

ユニット玄関には木格子を設けて、利用者の目印となるような意匠を施している。

7. 共用廊下

共用廊下

木質感のある床仕上げを使用し、天井格子等落ち着きのあるデザインとしている。

8. 食堂・共同生活室

食堂・共同生活室

いちばん滞在時間の長い食堂・共同生活室は、耐久力のあるフローリングを使用し、木の温もりが感じられる。

9. ホール

ホール

人が通るホールについては、木調の素材を使用している。天井格子等を設けて、和風のデザインにしている。

10 サイン

サイン

施設らしくならないように、積み木を組み合わせた木製のサインを設けている。

運営者・現場で働くスタッフ・設計者の声

  • 構造躯体の建て方が早く、RC造のように多くの人員を必要とせず、5人程度の大工で組み立てることができた。[運営者]
  • 既存の施設と比較して、暖房等を使用しなくても十分温かさが伝わる。[運営者]
  • 空気感が柔らかいためか、利用者が落ち着いて生活できている。[運営者]
  • 床が柔らかいためか、動く利用者が増えたような気がする。[運営者]
  • 木造の建物は他構法に比べて床のクッション性があり、入居者が転倒した際に怪我の低減を図ることを可能にすると共に、介護職員にとっても足腰の疲れが軽いといった身体的負担も少なく、労働環境の改善につながっている。[運営者]

施設写真・図面

南西側地上から見る
共用廊下
居室
東側隣地小学校との記念壁画