ケアタウンたちばな
~施設の機能に合わせた木造の在り方~
事業概要
- 入居・通所棟【A】
・認知症デイサービス:11人
・小規模多機能型居宅介護:25 人- 通い定員:15 人
- 泊まり定員:7 人
・特別養護老人ホーム:22 人- (短期入所生活介護定員2名含む)
- サービス付き高齢者向け住宅:12戸【B】
- 管理棟・地域交流拠点【C】
- ・ 居宅介護事業所
- ・ 訪問介護事業所
- ・ 地域交流拠点
建築概要
階数 | 【A】平屋【B】地上2階建て |
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地域制限 | その他の地域 |
防耐火種別 | 【A】準耐火建築物 【B・C】その他の建築物 |
敷地面積 | 7,825.59㎡ |
建築面積 | 2,544.14㎡ |
延床面積 | 【A・C】1,522㎡【B】755㎡ |
構造種別 | 木造(軸組工法) |
設計監理 | 株式会社佐藤総合計画 |
設計監修 | 近畿大学 山口健太郎 |
施工 | 川田建設工業株式会社 |
工事工期 | 【A・C】2008年2月~2008年6月 【B】2013年5月~2013年10月 |
木造施設としての工夫
1. 分棟化による耐火要件の引き下げ
ケアの連携が必要な入居・通所棟(特別養護老人ホーム、小規模多機能型居宅、デイサービスセンター、配食センター)は連結しており、準耐火建築物となっている。サービス付き高齢者向け住宅、管理棟・地域交流拠点は、その他の建築物となっている。
2. 【B】延床1,000㎡以下の積極的木質化
サービス付き高齢者向け住宅は、住居を14戸から12戸に計画変更し、延床面積を1,000 ㎡以下に抑えることで、外壁及び軒裏の延焼のおそれのある部分を防火構造とする必要がなくなり、周囲に幅員3m以上の通路を設けなくても建築が可能となっている。
3. 【B】ブレースを目立たせない木格子
サービス付き高齢者向け住宅の屋根は、軒を深くすることで、広々とした屋外通路を設けている。また、柱間には水平方向の揺れを制御するブレースを設けている。柱間の外側に木格子を設置することによって、ブレースが目立ちにくくなるように工夫されている。
4. 床下通気の確保
高齢者施設はバリアフリー化が要求されると同時に、木造建築では建築基準法により床下通気が必要となる。そこで、建物の周囲を掘り下げることにより床下通気を確保している。また、分棟化によって生じた通路部分には緩やかなスロープを設けている。
施設概要
ケアタウンたちばなは、急速な高齢化が進む福岡県大牟田市にある。市営住宅に隣接して計画されており、周辺地域の福祉拠点として位置づけられている。敷地内には、訪問介護事業所、小規模多機能型居宅介護、サービス付き高齢者向け住宅、特別養護老人ホーム等があり、住み慣れた地域の中で最期まで住み続けることができる仕組みが整えられている。
木造・木質化の特徴
5. 【A】入居・通所棟
入居・通所棟の主要構造部は大断面集成材による燃えしろ設計とし、その他の部分は強化石膏ボードを両面貼りする仕様の準耐火構造としている。その上で、内装制限が適用されない床、腰壁、建具の枠や扉、手すりには木材を用い、木造らしい建物としている。
6. 【C】管理棟事務室
管理棟及び交流棟は、「その他の建築物」としている。天井を貼らず、木造の小屋組みを見せている。
7. 【A】木格子の間仕切り壁
入居・通所棟のリビングは準耐火建築物でありながら、大きな木製格子の間仕切り壁を用い、木質化された空間としている。
8. 【A】雪見障子
入居・通所棟の居室と廊下の境界には、入居者が自由に共用空間との関わりをコントロールできるよう、障子を設けている。
9. 【A】床
床は、根太組の上にフローリングとしている。衝撃吸収効果があり、転倒時のリスクを軽減している。
運営者・現場で働くスタッフ・設計者の声
- ケアタウンたちばなでは、施設の住居化、工期の短縮という観点から木造を採用している。
- 住宅のような施設とするために、建物機能により分棟して住宅のスケールに近い内部空間とするなど、住み慣れた環境に近い住環境を入居者に提供している。さらに、分棟化は屋根形状が小さく複雑になり、外観にも住宅らしさが生まれている。
- 特別養護老人ホームと小規模多機能型居宅介護は、介護保険事業計画に位置付けられており、補助金の都合上竣工時期が決まっていたため、工期短縮の観点からも、木造が採用されている。