ときわぎ世田谷 ~~分棟化と燃えしろ設計の活用~

北西側外観
木製フロアマップ
回遊性のある通路で目印となる玄関
建物形状に沿って曲がる廊下が単調な空間に変化をもたらす
建物全体を舟形としたことで生まれる凹凸のある機能訓練室

事業概要

  • 特別養護老人ホーム:定員90人
  • ショートステイ:定員10人
  • 地域交流スペース

建築概要

階数 地下1階・地上4階建て
地域制限 準防火地域
防耐火種別 耐火建築物
敷地面積 1,990.46㎡
建築面積 1,387.32㎡
延床面積 4,989.23㎡
構造種別 地上2階~4階:木造(枠組壁工法)
地下1階・地上1階:鉄筋コンクリート造
設計 株式会社メドックス
施工 三井ホーム株式会社
工事工期 2018年3月~2019年6月

木造施設としての工夫

1. 減少する大工の活躍の場

複雑な形状の屋根

大規模木造では施工時の些細なズレが命取りとなるため、高い技術力が求められる。本建物では、建て方から複雑な屋根の施工まで、実力のある気仙大工(岩手県気仙地方の大工の呼称)が担っている。

2. 施工時の騒音軽減

北西側外観

地下1階・地上1階は防耐火上RC造だが、掘削や施工の際に近隣から騒音についてクレームがあった。一方、2階以上の木造部分の施工期間にはそういったクレームは無かった。

3. 密集市街地での施工性確保

4階共同生活スペースから吹き抜けを見る

敷地は密集市街地に位置するため、大規模建築をつくるためには重機の配置や材料運びが重要な課題となる。そのため、設計段階でクレーンを置くスペースを兼ねた吹き抜けを計画することで解決し、現在は採光・換気を確保するスペースとして活用されている。

 

4階から吹き抜けを見下ろす

4. 地下1階の有効利用

地下1階に設けられた設備機器

受水槽、スプリンクラー設備など必要な設備類を地階に配置することで、計100床の居室を確保することができた。

施設概要

ときわぎ世田谷は、これまでに特別養護老人ホーム、高齢者デイサービスセンター、認可保育園などを運営する社会福祉法人常盤会が運営主体となり、国有地(国家公務員宿舎跡地)に建てられた施設である。特別養護老人ホーム、ショートステイ、防災拠点型地域交流スペースから成り、地下1階・地上1階は地震発生時の液状化や、水没から建物を守り、継続的な生活支援を行えるよう鉄筋コンクリート造(RC造)とし、2階から4階はRC造に比べて環境にやさしく居住性の高い木造(枠組壁工法)を採用した立面混構造となっている。

木造施設としての工夫

5. 広々とした共用空間の実現

共同生活スペース

入居者がほとんどの時間を過ごす2階から4階は木造(枠組壁工法)としながら、車いすでも10名程度が利用できる広々とした共用空間を実現し、入居者の交流の場となっている。

6. 全周片持ちバルコニー

4階バルコニー

3階以上の特養では、原則車いすが通れる全周バルコニーの設置が義務付けられているため、2階以上に全周片持ちバルコニーを設け、限られた敷地を最大限に活かした計画を可能としている。

7. 根太床工法と置床工法

廊下から居室を見る

廊下は一般的な根太床工法とし、居室はよりクッション性のある置床工法を採用している。バリアフリーに配慮し、工法の変わり目となる部分も段差無く仕上げている。

8. 居室の床材への配慮

居室の水廻り

居室の床は、ワックスフリーのフローリングを選んでいる。また、トイレの床は清掃面を考慮して長尺シート張りとしている。入居者だけでなく、スタッフにもやさしい施設となっている。

運営者・現場で働くスタッフ・設計者の声

  • 枠組壁工法とすることにより他の造りに比べて職人の手間を削減することができたため、建設費の削減につながっていると思う。また、遮音性について懸念されるが、上下階の音がしてもクレームはない。むしろ、こういった施設では家と同じ感覚で生活音があった方が良いのかもしれない。
  • 床の柔らかさが違う。また、中に入ると以前働いていたRC造のようなひやっとした冷たさがなく、ホワンとする。[運営者]

施設写真・図面

ベッドからトイレまで移動しやすい設え
エントランスホール
共同生活スペース(食堂・談話コーナー)
エレベーター前のホール
大きく湾曲した非常階段の壁面
1階地域交流スペース(カフェ併設)入口