医療法人恕泉会 リハビリテーション病院
すこやかな杜
~木の持つ癒しの力を活かした医療環境の整備~
事業概要
- リハビリテーション病院
- 回復期リハビリテーション病棟
- 病床数:60床
建築概要
階数 | 地上2階建て |
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地域制限 | なし |
防耐火種別 | その他建築物 |
敷地面積 | 23,600㎡ |
延床面積 | 4,813㎡ |
構造種別 | 木造(軸組工法) |
設計 | 山本長水建築設計事務所 及び 有限会社テラ |
施工 | 入交建設株式会社 |
工事工期 | 2007年6月~2007年12月 |
木造施設としての工夫
1. 親しみやすいしつらえの外来空間
待合室は、柱、梁及び屋根架構を木現しとし、床、壁、天井、家具等に木を用いている。木に囲まれた温かみと落ち着きのある雰囲気を形成している。
診察室は、床をヒノキの無垢フローリング、壁及び天井も板張りとしている。また、家具も木製とし、患者が安心して診察を受けられる落ち着いた診療空間となっている。
2. 患者に安心感を与える検査室
CT室は梁を現しとし、床を無垢フローリングとし、放射線を防護するための壁の仕上げにも無垢の木板を張っている。天井には木目調化粧合板を張り、視覚的に患者の緊張感を和らげる工夫がなされている。
X線室もCT室と同様に、梁を現しとし、床を無垢フローリングとし、放射線を防護するための壁の仕上げにも無垢の木板を張っている。
施設概要
- すこやかな杜は、診療棟、リハビリ棟、北病棟、中央病棟、南病棟による、木造2階建と平屋の分棟による構成となっている。木造住宅のような建物という考え方で設計されており、建物間の中庭はリハビリテーションの場ともなっている。
- 「木造特有の温かみのある広々とした空間のなかで、木の持つ癒しの力を最大限に受けて治療に専念できる環境を、より多くの方に実感していただきたい。」という思いを持った建築主の法人理事長の方針が、「木造住宅の感覚で医療施設を設計する」というものであった。こうした建築主の強い意向に基づき、設計者、施工者が木造化・木質化に取り組み、実現した。
- 各棟を1,000㎡未満に分棟し、2階の病室は300㎡未満にすることで、その他建築物を実現している。
木造・木質化の特徴
3. 診療ゾーン
丸太の登り梁と方杖丸太で構成された架構が、木に包まれたような安心感のある空間を実現している。また、床は車椅子対応に考慮し、硬いヒノキの無垢フローリングを用いている。
多様なリハビリ治療に対応できるよう、丸太の方杖を用いて梁間方向のスパンを飛ばしている。丸太を用いることで、衝突時の事故を軽減させることにも寄与している。
4. 病室
病室は真壁づくりとし、住宅のような親しみやすい雰囲気を形成している。多様な要素で構成された変化のある空間形状や、複数の仕上げ材による色や質感の違いにより、スプリンクラーの配管はあまり目立たない。
5. 診療ゾーン
言語療法室は方形屋根に登り梁が放射状に掛けられ、木材がふんだんに用いられている。患者が医師の声を聞き取りやすくするための配慮にも関連していると考えられる。
運営者・現場で働くスタッフ・設計者の声
- 鉄筋コンクリート造の建物に比べ、冬に底冷えする感じがないことや、壁などに触っても冷たくないのがよい。また、鉄筋コンクリート造の医療施設では落ち着きのない子供が、当施設では落ち着いて診察を受けることができる。[運営者]
- 消毒は行っているが、病院臭がせず、木の香りが落ち着く。[運営者]
- 法人グループの施設管理部門が毎月点検を行い、補修等の維持管理を実施している。修繕等は手がかかるが、それ以上に木造の良さを享受している。[運営者]
施設写真・図面
診察室用の流しが組み込まれた木製収納家具。天板は集成板に塗装仕上げとし、汚れ防止のため、ビニールシートが敷かれている。
診察室と通路を仕切る部分に配置された木製の家具。背板をスギ板の化粧張りとし、木質感の向上に寄与している。
診察室と通路を仕切る木製のカルテ棚。木質化が可能な部分には積極的に木を採用している。
放射線を防護するために鉛板を挟んだ木製建具。
病室の前室。洗面とトイレがあり、壁と建具が木質化されている。
壁にスギ板が張られた病室トイレ。床はメンテナンスがしやすいよう、塩ビシート張りとなっている。
各病棟間には、中庭が設けられている。散策路や畑、庭などがあり、リハビリの一環としても活用されている。