医療法人杏月会 空の森クリニック
~森を再生を通じて医療と癒しの融合をめざした医療施設~

南東側外観 撮影者:木田勝久/FOTOTECA
待合より中庭を見る 撮影者:木田勝久/FOTOTECA
受付

事業概要

産婦人科(診療所)

  • 病床数:18床

建築概要

階数 平屋
地域制限 市街化調整区域(防火制限なし)
防耐火種別 その他建築物
敷地面積 12,762.77㎡
延床面積 2,996.60㎡
構造種別 木造、一部鉄筋コンクリート造
設計 株式会社手塚建築研究所
施工 株式会社沖電工
工事工期 2013年8月~2014年10月

木造施設としての工夫

1. 内外が連続した開放的なしつらえを実現する

病室

病室は木造(欧州アカマツの集成材による柱・梁架構)とし、真壁工法により柱・梁を現しとしている。天井は不燃処理を施した構造用合板で仕上げ、木の温もりが感じられる療養空間となっている。

 

半屋外空間となっている廊下

柱、梁、天井を木質化した幅1,820mmのゆとりのある廊下は、緑豊かな中庭に面した南国らしい半屋外空間にしつらえられ、開放感のある快適な空間を実現している。

2. 木造部分と鉄筋コンクリート造部分とを防耐火上明確に区分し、温かみのある木質空間を実現する

病室

柱・梁を現しとした病室は、床、天井、家具、ブラインドを木質化し、温かみと落ち着きのある空間を演出している。メディカルコンソールは、木製の造り付けとしている。

 
 

木質化された待合室

診察や検査等、長時間でも快適に待機できるように床、天井、家具を木質化し、落ち着きのある空間を提供している。

 

ラウンジ(防火区画)

鉄筋コンクリート造によるラウンジ空間を防火区画として4ヶ所設置している。これにより、建物全体を1,000㎡未満の4つの棟に分割し、その他建築物として成立させている。

施設概要

第二次世界大戦で失われた沖縄本来の森を再生し、新たな命を育み、木造の巣をつくることを試みている。深い軒と外廊下が森の合間を巡るリゾート施設のような不妊治療の診療所である。不妊治療は、患者の心理的、精神的な負担が大きいため、プライバシーを確保し、リラックスできる施設づくりを目指している。手術室、培養室など衛生性が要求される部分を除き、非常に開放的な木造化・木質化空間となっている。

木造・木質化の特徴

3. 産科受付・待合室【外来】

当初スタッフ用のカフェだった部屋を産科の待合室に改修。木の柱・梁が現しであったため、壁の増設等を容易に実現している。

4. 診療室【外来】

診察台回りのみ床を塩ビシート張りとしている。診察に必要な照明以外は照度を落とし、安心できる空間を演出している。

5. 処置室【外来】

床は塩ビシート張りとしているが、衝立や天井に設置したエアコンの目隠し格子を木質化して温かみのある空間に仕立てている。

6. 分娩室【診療】

当初は医局として整備した部屋を分娩室に改修し、床はフローリングから塩ビシートに張り替えられている。

7. ナースステーション【病棟】

患者が安心感が得られるよう落ち着いた雰囲気にしつらえられている。看護師も威圧感を和らげるカジュアルな制服を身につけている。

8. 手術室【診療】

衛生性が求められる手術室は鉄筋コンクリート造の棟に設置され、全ての部位は非木質系の材料で仕上げられている。

運営者・現場で働くスタッフ・設計者の声

木造を選択した理由

  • 第二次世界大戦で失われた沖縄の森の再生を目指している。森を再生することは、癒しが必要な医療にも通ずるという考えから、空の森プロジェクトをスタートさせ、「森」というキーワードから設計者より木造の提案を受けた。当初木造で医療施設を作ることに迷いがあったが、理事長自身も木造住宅で生まれ育った経験から、挑戦に至った。[運営者]
  • 今後の医療施設運営は様々な変化が想定される。そのような中、当該施設への新たな投資や用途変更も可能な長期耐用性に優れた木造施設づくりも検討した。医療と癒しの融合を目指し、医療の世界の科学万能主義に一石を投じたとも考えている。[運営者]

施設写真・図面

ライブラリー

患者が待ち時間の間に利用している。床、天井、家具が木質化され落ち着いた雰囲気を実現。

パウダールーム

天井、ブース、洗面台、鏡枠を木質化した温かみのあるパウダールーム。