宮城県立がんセンター 緩和ケア病棟
~庭と個室が連続する木質化した緩和ケア病棟~

中庭を囲う病棟
建物外観
ナースステーション

事業概要

がん緩和ケア病棟

  • 特別個室:12室
  • 一般個室:5室
  • 2床室:4室

建築概要

階数 地上2階建て
地域制限 法22条地域
防耐火種別 耐火建築物
敷地面積 6,124.62㎡
延床面積 1,930.58㎡
構造種別 壁式鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
設計 株式会社藤木隆男建築研究所
施工 佐藤・相澤特定建設共同企業体
工事工期 2001年3月~2002年3月

木質化の工夫

1. 木質化した内部・外部の生活空間

個室の内観(特別個室)

個室は、床をフローリング、壁の一部を練り付け合板で木質化している。ベッドヘッドの棚、収納などの家具も木質化。特別個室には、ベッド沿いに畳小上がりスペースを設け、家族との団らんの場となっている。電球色の照明を含め、あたたかい雰囲気をつくっている。

 

個室の外観・テラス

個室から出入りできる木製デッキのテラス。木製のパーゴラ(日陰棚)が設けられ、日向ぼっこや物干しのスペースになる。パーゴラの上面は板金を、柱の脚部は金物を設け、雨水の影響を抑えている。 建物は外壁板張り、木製サッシで落ち着きが感じられ、住宅のような印象を与えている。

2. 木質化した個室の細やかなしつらえ

個室(一般個室)

一般個室は、特別個室と同様に床、壁、家具等を木質化している。中庭に面し、開口率が高く、柔らかな自然光が感じられ、木々の緑を臨むことができる。

 

水まわり(特別個室)

洗面・トイレの仕切り壁材と家具の仕上げ材が練り付け合板で材質が統一されている。室内の木質の雰囲気を整えている。

 

開口部まわり

個室から中庭へは、木製サッシで間仕切られている。床の段差はなく、車いす等でも出入りがしやすくなっている。

施設概要

宮城県立がんセンターに併設されている緩和ケア病棟。つらい症状を和らげるための治療とケアを最優先し、症状が緩和した患者が終末期を自宅で過ごすことを支える、医療施設と家の中間施設である。患者と家族が豊かで静かな時を過ごせるよう、日常的な生活のための個室を充実させ、内外に木を用いて温かみのある空間とし、中庭を囲む個室と戸外の親和性の高い関係をつくっている。

木質化の特徴

3. 個室【ベッドまわり】

個室のベッドヘッド部分を木質化し、スイッチやコンセントなどのカバーとなる木製の引戸や扉を設置している。

4. キッチンまわり

個室の収納は木製造作家具でつくられている。ミニキッチンも木質化し、室内の雰囲気にあわせたつくりとしている。

5. 化粧室

洗面化粧室の床は塩ビシート張りとして清掃しやすくし、収納棚や建具は木製としている。

6. 廊下

廊下の床は木製複合フローリング張り。個室側の壁は練り付け合板により木質化している。

7. 開口部

廊下の開口部はアルミサッシの室内側に木製の枠、方立て(窓などのたて枠を支える垂直の補強材)等を設置し、木質感を高めている。

8. 浴室

浴室の壁はヒノキ板張りにし、木の香りが感じられる。一部黒ずみが生じたが、張り替えにより対応してある。

運営者・現場で働くスタッフ・設計者の声

  • 入所した患者様・ご家族からは「やすらぎ、温かさに包み込まれる感じがする。」「生活をしていて落ち着く。」「ベッドのある部屋から中庭に移動しやすいのはありがたく、ペットとも散歩しやすい。」「個室に畳スペースがあるので、家族がベッドと高さを揃えて一緒に就寝できた。」という声をいただいている。[運営者]
  • 「これまで感染が発生したことはない。臭いには気を遣うが、木による消臭効果で生活臭があまりしないので助かる。清掃は専門業者が毎日行っているが、清掃時に拭くのは手すり程度で特別なことはしていない。[スタッフ]

施設写真・図面

多目的室

患者・家族等との打合せ等を行う部屋は、壁や家具を木質化している。

家族室

患者のご家族が宿泊等に利用できる家族室。和室の設えで、天井や家具等を木質化している。