TSURUMIこどもホスピス
~木に包まれた空間で家族とくつろげるこどもホスピス~

施設全景
中庭より東側を見る
1階ホール(ひろい道)

事業概要

児童福祉施設等

  • (コミュニティ型こどもホスピス)

建築概要

階数 地上2階建て
地域制限 準防火地域
防耐火種別 準耐火建築物(口-1準耐)
敷地面積 2,719.90㎡
延床面積 979.11㎡
設計 大成建設株式会社一級建築士事務所
施工 大成建設株式会社 関西支店

木造施設としての工夫

1. 住宅スケールの分棟型配置とし、親しみやすさを実現する

中庭より北側を見る

約8~10mスパンの登り梁の屋根架構による「6つの家」を「道の空間」と呼ばれる溜まりや通路・テラスがつなぐ構成となっている。住宅スケールの棟を分棟して配置し、様々なオープンスペースに面させて、利用する子どもや家族にとって親しみやすく落ち着ける空間を実現している。

 

2. 切妻の木造架構を現しとし、家らしさを表現する

2階ホール(みんなの部屋)

子どもとその家族が食事、談話等をして過ごせるスペースを整備。切妻屋根の棟木と登り梁を現しとし、床はナラ無垢フローリング、壁及び天井はシナ合板、木製建具でしつらえ、住宅のようなあたたかみの感じられる空間としている。

 

施設概要

日本初の「コミュニティ型こどもホスピス」である。入院治療を終え在宅看護へ移行した難病の子どもに家の外で遊びや学び、家族とのくつろぎの機会を提供する施設であり、家族にとっても休息できる場となっている。「家であるだけでなく、村のような場所」をコンセプトに、多様な空間や居場所があり繋がりの持てる場所を創出している。

木造・木質化の特徴

3. 1階ホール(ひろい道)

施設全体にスプリンクラー設備を設置。かつ、自然排煙とすることで内装制限の適用を緩和し木質化している。これ以外に柱・梁、床、壁、建具、家具にも木をふんだんに用いている。

 

500㎡の防煙区画のために設けられた鋼製建具(常時閉鎖)上部の垂れ壁。壁の仕上げ材には不燃処理を施した木材を使用することにより、木質感の連続性を担保している。

4. 1階廊下(ほそい道)

アカマツ集成材の柱及びベイマツ集成材床梁を現しにするとともに、床及びアイストップとなる壁の一部を木質化し、温かみのある通路空間を実現している。

5. 1階遊戯室(おおきな部屋)

遊戯室は、床をナラ無垢フローリングとし、目に留まりやすい折上げ天井部、建具及び家具を木質化し、室全体を温かみのある印象にしつらえている。

6. 1階休憩室(にわの部屋)

休憩室は、床をナラ無垢フローリング、家具を木製とし、住宅的なしつらえとしている。

運営者・現場で働くスタッフ・設計者の声

運営者による「病院ではなく家であること」という意向を受けて、設計者が提案した木造化・木質化に関連するコンセプトは下記の通り(設計者作成資料から抜粋)。

  • 誰もが家と感じられる普遍的な家型が集まり、村のような風景をつくり出す(木造住宅スケールの分棟配置)
  • インテリアに家型のモチーフを散りばめる(切妻の現しの木造架構、家型の開口部等)
  • 触れて感じる建築とする(様々な樹種、木質材料を用い、木の触感、視覚、嗅覚の体験等)
  • 難病の子どもたちと家族をやさしく迎えるための彩りを与える家具(主に木製)

施設写真・図面

2階休憩室(おおやねの部屋)

切妻屋根の棟木と登り梁を現しとし、床はナラ無垢フローリング、天井はシナ合板、建具及び家具を木製でしつらえ、子どもと家族が自分たちの家にいるようにくつろげる宿泊スペースを実現している。

 

 

2階ホール(みんなの部屋)

壁だけでなく収納扉や冷暖房機の目隠しも木質化することにより、部屋全体がやわらかく包まれた印象を高めている。

 

住宅用サイズの木製家具を配置し、家で過ごしているかのような親しみやすいしつらえとしている。

1階だれでもトイレ

トイレは機能性を優先し、ビニル床シートを採用しているが、木目調として施設全体に統一感を持たせている。